MUGEN Blastersのヴァレリーさん(Vo)が2023年4月から新しいワイヤレスマイクカプセルを使い始めた。
横浜マイクロホンのtsubaki-WL🎤
2つの記事に分けてマイク選びの経緯を書いていく第一弾。
横浜マイクロホンのマイクは、生ライブにこだわるファンクカバーバンド MUGEN Blastersにとって救世主になりそう。
・バンドサウンドの中でボーカルが抜けてきて聴こえやすくなった。
・バラードではPAから聴こえてくる声の音色が豊かになった。
・マイクのゲインが上がったが、ハウリング・フィードバックは前より抑えられている。
・ヴァレリーさん自身が「歌いやすくなった」と感じている。
▪️ライブバンドとしての課題
「バンドサウンド全体でもっと迫力を出したい」
「バンドサウンドの中で少しでもボーカルが抜けて聴こえる感じを出したい」
「ボーカル音量が楽器隊の音に負けず、且つ ハウリングは最小化したい」
MUGEN Blastersは楽器隊の音が大きいが、ヴァレリーさんは声量がある方ではない。それでも、バンドサウンドの中でボーカルが抜けて聴こえてきて欲しい。
練習するのはもちろんだが、少し機材の力を借りれるなら…と思っている。
ライブバンドなのでワイヤレスマイクが必須。
MUGEN Blastersの歴代ボーカルは、約10年間ずっとLine6 XD-V75 (2.4GHz帯ワイヤレスマイクシステム)を使っている。SHUREのワイヤレスシステムと比較した事はないが、当時はLine6が入手し易かったし、ギター・ベースもLine6のワイヤレスユーザーなので縁があった。
Line6 XD-V75のマイク部分(送信機) V75-HHTXにはマイクモデリング機能があり、スイッチひとつでお手軽に有名なマイクの雰囲気を試せるのも魅力だった。
<モデリング一覧>
Line 6 Custom
Shure SM58
Shure Beta 58
Shure SM57
Sennheiser e835
Sennheiser e935
Audio-Technica AE4100
Electro-Voice N/D767a
Audix OM5
AKG D5
リハーサルでは、主にe935, Beta58などのモデリングを試して一番しっくりくるセッティングで使っていた。15帖のスタジオでリハーサルするのだが、楽器隊が大きい音量なのでボーカルマイクがハウリングを起こしたり、ボーカルマイクでドラムの音を拾いすぎてしまったりで苦労していた。
ライブの時はライブハウスのPA担当から「モデリングはSM58にして下さいっ!」と言われる事もあった。すごい声量の持ち主でもない & マイクの知識が乏しかった我々は、しぶしぶそれに従う感じだった。特にボーカルがバンドサウンドに埋もれて聴こえず、PA側でゲインや音量を上げるとハウる状況では言われた通りにしておくのが無難…。
今はある程度の知識を持っており、色々なライブハウスでのステージ経験があり、コーラスマイクについては自分達でアンチフィードバック&ゲートを掛けていて、以前よりボーカルの声量も多少は上がっているので、SM58のモデリングを要望された場合は話し合いさせてもらっている。
▪️カプセルって交換出来るのね
2023/3/25(土) MUGEN Blasters ライブ in 松戸 StageV、初千葉県でのライブ。
サウンドチェック後にStageVのオーナーと話していると
オーナー「ワイヤレスマイクはLine6 V75-HHTXですね。ウチでも使ってますよ。カプセルも幾つか用意してます。僕が好きなのは…」
リチャード「え? カプセルってなぁに?」
Line6 V75-HHTXはカプセル(マイクヘッド)を他の製品に交換して使えるらしい。SHUREのワイヤレスと互換なので交換出来る製品が沢山ある。
知らなかった…。
当然だが、カプセルを交換するとモデリング機能は使えなくなる。
楽器屋さんの様なオーナー「今ウチにあるカプセルはこんな感じ…」
8個くらい並べて見せてくれた。
リチャード「こんなにあるの?」
優しく教えてくれるオーナー「コレはこんな感じ、コレはカッコいいでしょ?コレは…」
後光が差しているオーナー「ウチはボーカルブースもあって、常連さんにはそこで試してもらって、その人に合うカプセルを選んでもらう事もあるんですよ」
StageV、なんて素晴らしいライブハウスなんだ。
ライブ当日は試している余裕もないので知識だけ仕入れて撤収。
少しでも良くなる可能性があるなら…ということで、ライブ終了後にリチャードとヴァレリーさんはカプセルについて相談を始めた。
数日後、バー営業中のStageVを訪ねて、ボーカルブースで複数のカプセルを試させてもらった。
ダイナミックとコンデンサー、カーディオイド(単一指向性)とスーパーカーディオイド(超単一指向性)、各プロダクト毎の音の違いが分かる貴重な体験だった。
▪️カプセル選びの旅が始まった
StageVを再度訪れて試させてもらったカプセルは下記の通り。ワイヤレスマイク本体はお店のLine6 V75-HHTXを借りた。
SHURE RPW112 (SM58) ダイナミック
SHURE RPW118 (BETA58A) ダイナミック
Earthworks SR3314-B コンデンサー
Earthworks WL40V 生産終了 コンデンサー
audio-technica ATW-C4100 ダイナミック
audio-technica ATW-C5400 コンデンサー
試してみて、ヴァレリーさんとリチャードが気に入ったのはEarthworks SR3314-B とaudio-technica ATW-C5400。ゲインが上がる & 音色が良くなる感じ。ただし、両方ともコンデンサーマイクなので、一般的にはバンドライブでシンガーが使うにはステージ上の音の被りの問題で厳しいのかも…。
YouTubeのマイク比較動画はそれなりにあるけど、歌だけだったり弾き語りやアコースティックばかりで、バンドサウンドで比較してるのが皆無。情報が少なすぎる。
カプセルはどれも結構なお値段がするし、在庫無しで取り寄せのパターンが多い。
Earthworks SR3314は見た目がかっこいいのだが、どこにも在庫無いしかなりお高い。そもそもよく知らないブランド。配信アプリで知り合ったニラジさんに「Earthworksってどーなんですか?」としれっと感想を聞いたりもした。彼がなんで言ったかは内緒。
audio-technica ATW-C5400もお高いがEarthworksの半額。音は良かったし国産メーカーだし。でも、コンデンサーマイクで周りの音を拾いすぎる為、MUGEN Blastersの様なバンドのボーカルがライブで使えるのか?という疑問は残る。買ったけど全く使えない状況は避けたい。
貸し出しやレンタルが無いかメーカーに問い合わせるも良い返事は無かった。アマチュアバンドの無理なお願いを聞いて貰えるわけもなく当然の結果ではある…。
SHURE互換の製品なのに「恐縮ですが他社製品と組み合わせて使う事は想定しておりませんので…」とまでメールで書かれてしまうと「リチャードの問い合わせの仕方が悪かったのね。ごめんね。」としかならない。
結局のところ、Line6純正のカプセルよりはSHURE RPW118 (BETA58A)が良かったので無難にそれかな。さすが定番。試した中では他のブランドのカプセルより安いし。
でも「おおっ、凄く良くなったね!」感は薄い。
▪️横浜マイクロホン、みーつけたっ!
リチャードがマイクについて色々と調べたり勉強していると「横浜マイクロホン」という謎のブランドを発見。埼玉出身の人が作っている横浜マイクロホン。今は横浜拠点だからいいの。
個人で経営している2021年創業のマイク設計製造販売の会社。SNSやらホームページを見ているととても興味を惹かれる。
sakuraとmomijiというマイクが主製品。
sakura「女性や声の高い男性には低域を補ってくれる」
momiji「声の低い男性には高域を補ってくれる」
ワイヤードマイクだけでなく、SHURE互換のワイヤレスカプセルも用意されている。
そして、どれも高いっ…。
お高いのでダメ元でヴァレリーさんに紹介したら妙に乗り気だ。ビビッと来たらしい。
女子ウケしそうなホームページに騙されてないか?
この横浜マイクロホン、ワイヤードもワイヤレスもデモ機の貸し出しがある。素晴らしい。
ギターやベースって楽器屋さんで試奏出来るけど、マイクって試せる所はなかなか無い。コロナ禍があったので余計に厳しい。
SNS情報で「デモ機の貸し出しは2ヶ月後まで予定が…」的な事が書いてあったので、ダメ元で連絡すると、ワイヤレスカプセルは1週間くらいしたら貸し出せそうとの事。ラッキーだ。
またまたニラジさんの配信で聞いてみた。
リチャード「横浜マイクロホンって知ってます?」
世界のニラジ「知ってる、知ってるっ!気になるよね〜。在庫切れだったマイク8本完成させたって今日呟いてたよね!」
流石によく知ってるなぁ。
▪️sakura-WLとmomiji-WLがやって来た
2023年4月上旬、横浜マイクロホンのご好意で、MUGEN Blastersリハーサル日に合わせてカプセルのデモ機達を借りる事ができた。バンドをバックにした状態でカプセル変えて試すのは初めて。
Line6標準カプセルも含めて取っ替え引っ替え試す。
Line6 とは全然違うっ!
ヴァレリーさん本人の意見とリチャード(Gt)やマッスー(Ba)の意見はそれぞれあるのだが、共通しているのは「コレ、いいねぇ」。
Line6との比較でsakura-WLとmomiji-WLに共通して言えるのは、
・ダイナミックマイクなのに感度が高いのでゲインが上がる。ボーカルの音量が上がる。でもハウりにくい。
・音の輪郭がハッキリするので聴こえやすくなる。
・音色に深みが出る。音色が豊かになる。
・見た目がかっこいい。
デモ機を借りたけど「何か違う」「余計ハウりやすい」「そこまでの変化はなかった」とかだったら気まずいなぁ。他に候補のカプセルがなければSHURE RPW118 (BETA58A)だよね、と思っていた。
でも、借りた2つを試したら、もうどっちかにしよう!と決めた。
買うのはヴァレリーさんだけど…。
▪️リチャード(Gt)とマッスー(Ba)の感想
リチャードとマッスーの意見は一致していて「音色はmomiji-WL、歌が聞こえやすく抜けてくるのはsakura-WL。」
リチャードは「スペックから考えてsakura-WLなら失敗は無いだろう。でも momiji-WLの音色は捨てがたい。」という感想。ヴァレリーさんがソプラノなので、sakuraの紹介に書いてある対象にマッチするし、スーパーカーディオイド(超単一指向性)なのでバンドでの音被りがよりしにくいという面でスペックから考えれば…と言う感じ。
1. 埋もれていたボーカルが前より聴こえる様になった
ゲインが上がるのは大きい。音の輪郭がハッキリする。
いつもはボーカルが聴こえなくてミキサーでゲインを上げるとハウリングするが、今回のリハ後半で sakura-WLを使っている時にボーカルが大き過ぎてPAのフェーダーを下げる事もあった。
2. 音の被りは気にならないレベルだった
ボーカルとシンセは左右前方上のモニターから、ボーカルの真後ろにドラムセット、左後方にギターアンプ、右斜め後ろにベースアンプという15帖のスタジオで、楽器隊の音量は大きめ。ボーカルマイクが楽器隊の音を拾い過ぎる事はなかった。このスタジオで指向性の面から sakura-WLとmomiji-WLの音被りの差は感じられなかった。ハウリングも無し。
3. PAから出てくる声の音色が良くなった
両方とも声が「とても魅力的ないい音」で鳴っていた。
sakura-WLでもmomiji-WLでも音色が豊かになったと感じる原因は、同じ声を出していてもマイクがいい所を拾ってくれているという事だと思われる。今まで拾えてなかった声の成分がしっかり拾われてPAから再生されている。
音色で言うとmomiji-WLが圧倒的に良かった。特にバラードやミドルテンポの楽器隊の音圧が少なめの曲でそれが分かった。
4. 音圧が高い曲でmomiji-WLは声が埋もれる
バンドの音圧が高いアップテンポの曲では、sakura-WLに比べるとmomiji-WLだと声が埋もれやすい、抜けてこない感じ。momiji-WLでも今まで使用していたLine6純正カプセルよりはゲインがあるので良いが、 sakura-WLがよりハッキリと抜けて聴こえてくる。
◾️ヴァレリーさん(vo)の感想
リハーサルを終えた時点で、ヴァレリーさんはsakura-WLとmomiji-WLのどちらにするか迷っている。
・バンドの音が大きい状況ではsakura-WLの方が聴こえやすい
・sakura-WLは低音域が補われている感じはするが、高音域が削られてる感じがしてちょっと歌いにくい
・momiji-WLは今までと同じ様な感覚で歌いやすい
・ハンドリングノイズはLine6純正よりはありそう
両方とても良いが、贅沢な悩みでどちらにするか迷っている。両方のいいとこ取りにはならないのか?
▪️横浜マイクロホン 池田さんの対応
リハーサルで試した印象やバンドメンバーの意見を横浜マイクロホン池田さんに伝えた。
ヴァレリー「購入します。でも、どちらにするか迷ってるの。」
すると彼から予想していなかった言葉が…
池田さん「実は近日中にsakuraとmomijiを中心に10段階の中から選べるカスタマイズサービスを開始しようと思ってまして…。カプセルもです。ただ、ちょっとお高くて…。」
ヴァレリー「おおおおおおお!」
リチャード「はぁぁぁぁ?」
▪️tsubaki登場
カスタマイズマイクの名称はtsubaki。めっちゃお高い。
①〜⑩の10段階から選べて、①〜⑤がsakuraベース。⑥〜⑩がmomijiベース。
①
②
③ sakura
④
⑤
—–
⑥
⑦
⑧ momiji
⑨
⑩
池田さんがカスタマイズの説明資料を送ってくれたので、わからない所を質問攻め。マイクについてよく分かっていない我々の理解が進む様に的確な回答をしてくれる池田さん。
「sakuraとmomijiの中間って何が中間なの?」
「逆に両方のいい所が薄まったりしない?」
「指向性はどうなるの?」
めっちゃ高いのにカスタマイズ注文したら後戻りは出来ない。しかし、心配を和らげる進め方が最初から用意されていた。このカスタマイズは必要があれば購入後に2回だけ違う番号のモデルに改造してもらえるのだ。
前日までsakura-WLとmomiji-WLの2択で悩んでいたのだが、④⑤⑥⑦の4択で悩む羽目になった。
tsubak-WLを注文する数時間前にヴァレリーさんが再度 池田さんに相談して心が決まった。
とても高いのだが「少しでも良いパフォーマンスを届けられるなら」というヴァレリーさんの想いは他の楽器と同じ。会場にいる人達が聴いて違いが分からない事であっても、プレイヤーは細かい所にこだわってお金掛けたり調整して、オーディエンスに刺さるパフォーマンスを届けようとしている。
カプセルの存在を知ってから18日間、横浜マイクロホンにデモ機の貸し出し依頼をしてから12日目で遂に発注となった。
▪️tsubaki-WLがやってきた
注文した数日後、⑤のtsubaki-WLが届いた。
同日、横浜マイクロホンから正式にtsubakiが製品リリースされた。
ヴァレリーさんがtsubaki-WLを個人練習で試してみた感想。
・言葉は前に出ている気がする
・高い音程から低い音程まですべて歌いやすい
・低域をしっかり拾ってくれてるが抑え気味
・高い音程は出しやすいけど、momiji-WLのイキイキとした感じには聴こえない
・sakura-WLの時の様な中低音の声がマイクにスルスル入る感じは無くなった
・momiji-WLを使った時の中高音がスルスル入る感じは無くなった
・sakura-WLだと中低音は身体の周りに音の広がりを感じたが、それが無くなった
・声を拾う口からマイクまでの距離が縮まった
・バンドで歌った時には、もしかしたら抜けてこないかもしれない
ヴァレリーさんに合わせてバランスよく調整されたマイクになったが、sakuraと momijiそれぞれの突出して印象に残っていた部分は薄まった、という事だろう。
身体の周りに音の広がりを感じる感じないは、バンドで歌った時と個人練習の差かもしれない。もしくはスタジオが違う事による環境の差かもしれない。
このtsubaki-WLがバンドサウンドの中で抜けてくるかどうかは次のライブで確認できそう。
この間も横浜マイクロホン池田さんとの必要なやり取りは続いており、色々なアドバイスや考え方を伝授して頂いているが、その内容はtsubakiの価格に含まれているものなので、ここに全部は書かない。
▪️判断基準は「ライブでどうか?」に尽きる
MUGEN Blastersはライブバンドなので判断基準は「ライブでどうか?」に尽きる。
レコーディングに縁はないし、DTMもしないし、アカペラで歌うわけでもない。
ノンストップパフォーマンスなので、ライブが始まってからのトラブルは最小限にしたい。
機材は丈夫であって欲しい。
そしてライブパフォーマンス中に歌い手がより気持ち良く歌えるかが大切。
現在、ライブ・バンドでのリハーサル・個人練習でマイクを試しながら、最終的に何番のtsubakiにするかを選定中。
次のブログに続く。
Special thanks to
横浜マイクロホン 池田さん
松戸のライブハウス StageV 堀越さん
NK Sound Tokyo ニラジさん